東日本大震災から15年を迎えて
代表 佐々木信秋からのメッセージ
2011年3月11日から、15年が経過しました。東日本大震災で亡くなられた方やそのご家族に対し、謹んでお悔やみを申し上げます。
東日本大震災は私の故郷である岩手県陸前高田市の風景を一瞬で変えました。津波によって町は壊滅的な被害を受け、多くの命や暮らしが失われました。
震災直後、私はただ「何かしなければならない」という想いだけで動いていました。物資を集め、避難所を支援し、外から来る支援者の調整をする。特別な知識や経験があったわけではありません。ただ、目の前で困っている人に応えることだけを考えていました。
やがて復興が進み、地域の状況が落ち着いてくると、別の悩みが生まれました。支援活動は必要でしたが、どれだけ取り組んでも地域の課題は次々と現れます。人口減少、高齢化、担い手不足、地域経済の縮小。震災によって顕在化した問題の多くは、実は震災以前から続いていたものでした。
私は次第に疑問を持つようになりました。「目の前の課題に対応し続けるだけで、本当に地域は良くなるのだろうか」と。例えば、買い物支援や移動支援などの取り組みは確かに意味があります。しかし、それらは人や資金の限られた努力に頼る「対症療法」になりがちです。課題が生まれる背景の仕組みが変わらなければ、同じ問題は何度でも繰り返されてしまいます。
そこで私が注目したのが「コレクティブインパクト」という考え方でした。行政、企業、NPO、市民、大学など多様な立場の人が同じ目標を共有し、それぞれの役割を持ちながら協力して地域課題に取り組む方法です。
そして、その先にあるのが「システムチェンジ」です。目の前の問題だけでなく、問題が生まれ続けてしまう地域の仕組みそのものを変えていこうとする取り組みです。陸前高田は小さな町ですが、人口減少社会において日本が直面する課題の最前線でもあります。だからこそ、この地域で生まれる取り組みは、同じ悩みを抱える全国の地域にとってヒントになるのではないかと感じています。
震災から年月が経った今も、私の原点は「この町に笑顔を増やしたい」というシンプルな願いです。その願いを実現するために、多くの人と力を合わせ、地域の仕組みそのものを変えていく挑戦を続けています。復興は決して終わりではなく、その先にある新しい地域の姿をつくる出発点なのだと、今は感じています。この町での小さな挑戦が、やがて他の地域の希望につながる。そんな未来を信じながら、これからも地域の仲間たちと共に歩んでいきたいと思っています。
2026年3月11日
一般社団法人トナリノ
代表理事 佐々木信秋
トナリノのこれまで、今、そしてこれから
震災の直後から岩手県陸前高田市に携わり、15年の歳月をともに過ごしてきたトナリノが、これまでの活動を振り返り、これからの展望について、みなさまにお伝えします。
東日本大震災の復興支援から、地域活性化支援へ
東日本大震災により、岩手県陸前高田市は大きな津波被害を受けました。震災の翌日、当時東京に住んでいた陸前高田市出身者たちを中心として、有志が集まって発足したのが、トナリノの前身となる「SAVE TAKATA(セーブタカタ)」でした。ウェブサイトを立ち上げて現地の情報を発信したり、物資を集めて現地の避難所へ運んだりと、緊急支援に当たりました。
2011年6月に一般社団法人を設立し、震災後の緊急支援フェーズが終了した後も、震災以前から過疎化が進んでいた地域として陸前高田市が抱えるさまざまな地域課題に取り組み、地域活性化に資する事業(社会的な取組)を展開する非営利団体として、活動を継続してきました。
2011年3月の活動開始から前期(2025年5月)までの累計実績は、下記のとおりです。
| 実施した案件 | 2,942件 |
|---|---|
| 受益者 | 148,515人 |
| 物産品等の販売 | 98,485個 |
| ボランティア参加者 | 4,779人 |
| 調達金額 | 637,229,100円 |
| 情報発信 | 665件 |
| 創出した職業 | 8種類(デザイナー、コーダー、ライター、イラストレーター、ファンドレイザー 、デジタル講師、コンサルタント、評価士) |
| 活動を行った地域 | 26市町村 |
活動から得たノウハウによる「コンサルティング(伴走支援)」
事業範囲は、イベントの企画・主催から、子どもたちへの課外授業実施、高齢者に向けたスマートフォン講習会実施、広報物や商品パッケージデザインの受注制作、地域の農作物を活かした商品開発・販売に至るまであらゆる分野に及び、手広く展開してきました。
そうした多彩な活動の中で、地域で活動する非営利団体、事業者、学校関係者、自治体等、さまざまな組織と関わりを持ち、信頼関係を築いてきました。また、資金調達方法や、「被災地」「過疎地域」における非営利活動について、手堅いノウハウを蓄積してきました。
活動により蓄積した知見を活かし、他の事業者や団体を経営や資金調達の面で支援する「コンサルティング(伴走支援)」「ファンドレイジング(資金調達支援)」もサービスとして扱うようになりました。2020年には法人名称を「トナリノ」に改め、「地域の相棒」をスローガンに掲げて、地域で活動する数多くの事業者や団体とともに歩んできました。
葛藤を経てたどり着いた結論「コレクティブインパクト」
一方で、多岐にわたる事業を続けていくことは困難を伴い、経営合理性から事業を絞るべきとの意見も多く受けました。しかし、事業を絞って取り組むことで地域課題が解決し、地域がよくなるイメージが持てなかったため、葛藤を抱え続けました。これは、非営利団体として地域の需要を一番大切にしたいと考えた、トナリノの基本姿勢によるものです。
葛藤の末に到達したのは、「自団体のみでは地域全体をよくする大規模な事業展開は難しい。だから複数の組織と手を組み、力を合わせて同じ目標を目指す方法を取ろう」という、「コレクティブインパクト」と呼ばれる概念でした。
こうして、連携する複数の組織を束ねる役割を担う「バックボーン組織」としての活動に主軸を移すことになりました。これに伴い、連携組織の「コンサルティング(伴走支援)」や「ファンドレイジング(資金調達支援)」を行う、「専門家」としての立ち位置も明確にしました。
これまでの、自ら事業の実施者として活動する形態から、実施者を支える役割を担う団体へと変遷したことを意味します。多種多様な事業を自ら展開した経験があり、地域にさまざまなつながりを持つトナリノにしかできない役割であると、自負しています。
今後のカギとなる「評価」
そして、これらの「バックボーン組織」および「専門家」としての業務を担っていく中で今後重視していきたいと考えているのが、「プログラム評価」です。
これは、事業の成果が実際にどのような変化を社会(地域)にもたらしたかという「効果」を、評価基準を設けて表し、わかりやすく示すもので、事業成果を確実に地域の改善につなげるために必要であり、比較的新しい非営利活動の考え方として普及しつつあるものです。
トナリノは15年に及ぶ活動の中で、さまざまな団体の取組を目にしながら、取組の良かった点、問題のあった点が整理されないまま、成功や失敗の要因が次に活かされず、似たような取組が繰り返されてしまうという現状を改善したいと感じていました。そしてこの「評価」という結論に至り、代表者は日本評価学会の認定を受け、「評価士」の資格を取得しました。
また、「評価」は、事業内容や成果・効果を可視化することで事業を広く知ってもらい、新たな賛同や協力の獲得につなげることができる点で、活動を継続させていくためにも欠かせない手段です。
目指すのは「システムチェンジ」
「複数の組織で協働して、課題を解決すること(コレクティブインパクト)」、そして「事業の成果を確実に残し、次につなげること(プログラム評価)」を念頭に、今トナリノが目指しているのは、地域課題が発生する原因を根本から解決する「システムチェンジ」です。
地域課題の裏には、さまざまな要因が複雑に絡み合って課題を発生させている「仕組み」が存在します。それら要因は、たとえば一次産業、観光業、教育など、異なる複数の分野にわたって存在し、どれか一つの分野が持つ課題を解決しても、地域全体として課題が生まれる構造は残されたままとなってしまいます。
そこでトナリノは、幅広い視野で分野横断を図り、中長期の視点を持って取り組むことで、地域課題が生まれる構造を断ち、地域が自律的に発展を続けることができる構造へと変えていきたいと考えています。悪循環を好循環に転換させるということです。思いを同じくする地域のみなさんとすでに話が進んでおり、手を組んで達成すれば、決して大きすぎることのない目標だと思っています。
そしてその先には、全国で私たちの活動がモデルとなり、人口減少が進む日本の将来を支える仕組みづくりにつながってゆく姿を、思い描いています。
拡大計画の矢先に訪れた、コロナ危機
2020年、突然訪れた新型コロナウイルスの流行。多くの事業者と同じように、トナリノも危機を迎えました。トナリノにとっては、スタッフを増員し、地域活性化のための事業をより拡大させていこうと意気込んでいた矢先のことでした。
感染症の拡大により、計画していた事業が次々と延期や中止となり、想定していた売上が立たなかった結果として3期連続の赤字、そして約5,500万円の債務超過に陥りました。
しかしその後もたくさんのご支援や応援をいただきながら、粘り強く事業や体制の見直しを図り、3期連続で黒字を計上できるまでになりました。それでもなお、コロナ禍に負った債務超過の解消には未だに至っておらず、財務面の抜本的な改善に力を注いでいます。
目標の実現に向けて
コロナ禍という大きな危機を迎えながらも、今もなお活動を続けていられるのは、ひとえにみなさまの厚いご支援や、事業へのご賛同・ご協力があったからに他なりません。そして事業を継続してこられたからこそ、「コレクティブインパクト」「システムチェンジ」という明確な目標にたどり着くことができました。
トナリノは引き続き、みなさまの温かい応援のもと、組織をよりよくして経営を安定させ、目標達成に向けて活動を続けて参りたいと思っています。
陸前高田に思いを寄せる方。被災地の発展を見守りたい方。トナリノの活動を「おもしろそう」と思ってくださった方。あるいは、「人口減少」や「高齢化」という言葉で表される日本の将来に、希望を持ちたい方。さまざまな思いの込められたご支援を、トナリノはいつでもお待ちしております。そして、複数の寄付方法の中からお好きな方法をお選びいただけます。詳しくは下記のリンクより、寄付募集のページをご覧ください。
これからも変わらぬご支援、ご協力を、どうぞよろしくお願い申し上げます。